「人魚」は実在しない!?
■米海洋大気局が公式見解を発表■
世界中で「人魚はいる」と信じられ、「見た」という記録もたくさんあるが、伝説の人魚が実在するかどうかをめぐり、米商務省の機関の一つで海洋と大気に関する調査や研究を専門とする米海洋大気局(NOAA)が「半人半漁の海の妖精の存在を裏付ける証拠はない」とする公式見解をこのほど発表した。米国のニュースには時々、ユニークなものがあるが、ハワイの絶滅危惧種アオウミガメの生息やハリケーンなどでお馴染のNOAAのような権威のある行政機関が、真面目に人魚について論じているのが、また面白い。
公表されたのは、米TVの「アニマルプラネット」が昨年、「人魚」をテーマとした番組を放送。ドキュメンタリータッチで検証し、専門家や写真家なども多数登場させたうえ、米政府の秘密主義などについてコメントしたことから、一般からの問い合わせが相次いだことが発端になったらしい。
15世紀末、コロンブスはアメリカ大陸へ船で向かう途中、「人魚を見た!」と、航海日誌に書いた、という。欧州では、アイルランドには修道士に恋をした人魚がいて、人魚が最後に流した涙は「小石」に変わり、今でもアイオナ島の岸辺の小石は「人魚の涙」と呼ばれている。イタリアの民話にも人魚の伝承があり、「ローレライの伝説」にはライン川を見下ろす断崖に座った人魚は、その魅惑的な歌声で船頭たちを破滅へと引き寄せた、といわれている。
日本で最も有名な人魚伝説は「八百比丘尼(やおびくに)」。同じような話が各地方に伝えられており、古代中国で編纂された地理と博物学の本「山海経」(せんがいきょう)には、人魚らしき生物が載っている。
ただ、こういう話題は、「サンタクロース」などと同様に、米国の一般的な家庭では、「子供たちに聞かれたら、夢を持たせる意味で肯定するか、実在しないと教えたりはしない」と意見が多いようだ。果たして、日本の科学技術庁に「お化けはいるのか?」とか、気象庁に「雷様はどこにいますか?」と聞いたら、何と答えが返ってくるだろうか?