ハワイ島沖で「海洋温度差発電」
■2プラント計画され、夢の発電となるか?■
海に囲まれたハワイ島コナ沖で、海の深層と表層の水の温度差を利用したユニークな「海洋温度差発電」に関する2つのプロジェクトが着々と進められている。出力は100kwと1,000kwの発電能力があり、ハワイ州自然エネルギー研究所内にある海軍の施設ですでに熱交換器の試験中。2014年春をメドに、ハワイのマカイ・オーシャン・エンジニアリングが出力100kwの発電機を取り付け、発電を開始する見込みになっている。
この海洋温度差発電の仕組みは、深海(水深約1000m)から冷たい海水を汲み上げ、太陽によって温められた海洋表層の温水との温度差を利用して熱機関を動かす。基本原理は、アンモニアなど沸点が低く、蒸発しやすい液体を表層の暖かい温水で気化し、気体によって発電タービンを回転させ電力を得る。その後、深層から汲み上げた冷たい海水で気化した液体を冷却して再び利用する。
装置の稼動には表層、深層から海水を取り込むポンプを稼動させる電力が要るが、発電された電力の一部で賄える。通常、赤道から20度以内の海洋であれば、表層と深海で約20℃の温度差がある。ハワイのような熱帯沿岸地域はこれらの条件を満たしている。
同研究所では現在、新エネルギーベンチャーのOTECインターナショナル社との間で、出力1,000kwと商業規模のプラントを建設する計画。ハワイ州の海洋温度差発電は、再生可能エネルギーの導入計画に基づくもので、ハワイ電力などと共に、海洋温度差発電を導入し、2015 年までに35MW、2030 年までに365MW 以上の発電量を目指す計画が盛り込まれている。
OTECインターナショナル社によると、2009年5月における全ハワイ経済のセクターでの電力料金は18.92セント/kw時で、米国で最も高い、とされている。この海洋温度差発電が実用化されると、ハワイ実証プラントの発電単価はkw時あたりのコストは20セント台前半であると試算されている。
また、自然エネルギーの中でも、太陽光発電や風力発電には「昼間しか働かない」や「風が吹かないと働かない」という特性がある。これらに対し、海洋温度差発電の設備利用率は非常に高く、 90%は超えると見られている。というのは、海水の蓄熱容量(太陽光の熱エネルギーを貯めておく容量)が高いからで、近い将来、夢の発電となるか? 関係者の期待は熱い。