眠れる獅子、巨大な中国マーケットに大きな期待
「ハワイなど米国の観光地は裕福な中国人観光客に照準を定めている」と、米国最大部数を誇る唯一の全国紙「USAトゥデイ」がこのほど報じた。記事によると、経済危機で疲弊しはじめているハワイをはじめ、ラスベガスやカリフォルニアなどの主要観光地が、業績を回復させるため、中国市場への売り込みに注力していることを紹介。全米の観光業界が巨大な潜在能力を持つ中国マーケットに大きく注目している事実を掲載した。
全米の観光地の中でも、多くの中国系米国人も住むハワイは、中国の富裕層に大きな期待を寄せている。ハワイ観光局は今年度、中国、韓国、台湾などアジアからの観光客誘致のため、上海万博でのPR費用などに約270万ドルの予算を計上。観光ビザが緩和されてきている中国人にとっても、憧れのリゾート地の一つがハワイ。気候が温暖で過ごしやすいことから、徐々にハワイ人気が高まっている、という。
ただ、いろいろ空路が検討されてはいるが、現在、中国からハワイへの直行便が就航していないことが、ハワイへの中国人観光客の増大に寄与していない、という大きなネックが存在。ハワイの観光業界などでは今後、中国人観光客の誘致には、中国からハワイへの直行便を就航させる、という問題がクリアできれば、さらに中国人観光客は増加するだろう、と見込んでいる。
実際、最近、ワイキキやアラモアナ界隈のショッピングゾーンなどでは、明らかに中国人観光客を思われるグループが増えてきている。下手な中国語で「台湾人ですか、中国人ですか?」と聞いてみると、「上海人(シャンハイレン)」という返事が返ってきて、確実に中国本土からの観光客と分かる。ただ、弊社TMSの大連支社に聞くと、「日本との結びつきが強く、人口約660万人の大連でも、まだまだハワイについて質問しても、位置すら知らない中国人が多い」という。今後、積極的なPRも鍵を握っていそうだ。
上記、USAトゥデイの記事では、米政府観光業関係者の話として、2008年に米国の観光地を訪れた中国人は延べ約50万人だが、今後は中国経済の発展に伴う中産階級や新富裕層の増加で、4年間に毎年2ケタのアップが見込まれる、と解説している。将来的には、中国の中産階級以上の人口は米国の総人口を超えると推測されていることから、「約14億人ともいわれる中国の人口に鑑みると、一部の観光客をハワイなどに誘致できるだけでも相当な規模になる」と景気回復へのカンフル剤として皮算用をしている。
富裕層を軸にした中国人観光客の1旅行当たりの平均消費額は一人7200ドルで、これまでトップだった日本人観光客の約1550ドルを大きく引き離し、他の国の平均をも大きく上回っている。あるワイキキのジュエリーショップでは「中国人団体客が来る時間帯を見計らってお店を開けると、あっと言う間にごっそりと買い込んで帰る」とコメント。近い将来、間違いなく中国はハワイにとっても最大の観光市場になる、と早くも大きな期待を寄せている。ワイキキの大手ホテルではすでに、中国人団体客対策として、中国語を話せるスタッフを採用しトレーニング。従来の日本人観光客に取って代わりそうなビッグマーケットの到来に備えている。