ハワイ最後の王女、プリンセス・カイウラニの儚い生涯を映画化
今秋から制作、撮影へクランクイン
王朝の崩壊を目のあたりにし、最後まで復活に奮闘したハワイ最後の王女「プリンセス・カイウラニ」のあまりにも短く波乱万丈な生涯を再現した映画が、この秋から制作されることになりました。マーク・フォービー監督率いる映画のタイトルは未定ですが、制作費は約900万ドル(約10億円)。プリンセス・カイウラニを演じるキャスト2人は共にハワイ出身者が選ばれました。主演女優は、2005年に公開された映画「ニューワールド」でネイティブ・アメリカンの少女、ポカホンタス役で一躍脚光を浴びたクオリアンカ・キルヒャー。若きカイウラニ王女の足跡をたどる役には、現在12歳でオアフ島在住のカイマナ・プアルヒちゃんに決まっています。
奥さんがオアフ島出身でハワイと強い接点を持つフォービー監督が、プリンセス・カイウラニの生涯を映画化するきっかけとなったのは、米国唯一の宮殿であるイオラニ・パレスに掲げられた彼女の肖像画を見たことからだったそうです。「この映画は、ハワイの政権を譲り渡さなければいけないという過酷な現実の中で、若き女性が国を統一しようとする一人の女性政治家として成長するストーリーなのです」と、フォービー監督は語っています。
この映画に対するフォービー監督の情熱はとても強く、調査や資料の収集はハワイだけでなく、カイウラニ王女が留学した英国にまで及びました。調査研究に数年費やし、多くの地元ハワイの専門家たちに助言を求めた結果、ハワイアンでさえ知らなかったような史実が含まれた念願の台本が完成。カイウラニ王女の視点から描かれるという制作意図を持つ映画は、非常に珍しく、カイウラニ王女について調べ尽くしたフォービー監督ならでは、という前評判も高く、作品の完成が今から楽しみです。
1875年にカラカウア の妹であるリケリケ王女とスコットランド出身のアーチボルド・クレゴーンの娘として生まれたカイウラニ。生まれてすぐカラカウア家に養女に出され、そこでプリンセスとして養育されました。日本との縁も深く、カラカウア王が日本の明治天皇に、カイウラニと日本の山階宮との縁談を持ちかけた当時、彼女はまだ5歳でした。歴史に「もし?」はありませんが、これが実現していたら、今のハワイと日本の関係はどうなっていたのか? など興味は尽きません。
王政を継ぐために13歳から英国へ留学中に、カラカウア王が死去。その後は政変が続き、叔母のリリウオカラニから王位継承者の1位に指名されることになりました。もともと美しい顔立ちだった彼女は、欧州社交界の教養も身につけ、英国だけでなく、フランスでも社交界の華になっていましたが、ついにハワイ王朝崩壊の知らせが舞い込みます。この悲劇を知ったカイウラニは王政復古を実現させようと、持ち前の美しさと強さで人々の心や国を動かし始めます。が、その努力も空しく、米国にハワイは併合されてしまったのです。その後、23歳5ヵ月という若さで病を患い、この世を去ったカイウラニ王女。彼女の果たせなかった約束、打ち砕かれた夢がこの映画のなかで表現されています。
映画の都ハリウッドという大舞台を通して、カイウラニ王女の真実が世界中に伝えられることは、ハワイの祖先や歴史を大切に思うハワイの人たちにとって、素晴らしい機会になりそうです。彼女が幼少期を過ごしたワイキキの地にはシェラトン・プリンセス・カイウラニ・ホテルが建ち、銅像もあり、道路名にもなるなど、カイウラニ王女とハワイには今も深い縁が随所にあります。カイウラニの一生やハワイの歴史をスクリーンで見られる日が待ち遠しいですね。