■謎の暗黒物質観測へ■
米ハワイ島にある「すばる望遠鏡」に、高感度でこれまでの7倍にあたる新たな広視野の巨大デジタルカメラを設置し、7日までに試験観測を始めた。すばるの主鏡の直径は約8mで、大口径の望遠鏡では世界最大の視野だが、これにより直径部分に満月が3個分入る領域を観測できるようになった。宇宙に満ちている正体不明の暗黒物質の分布地図やエネルギー解明につながる観測が期待されている。
新たな巨大デジタルカメラは約8億7000万画素の高解像度で、高さ3m、重さ3トン。国立天文台やキヤノンが協力し、2002年から10年がかりで開発された。鏡筒にセラミックが採用されたことで、軽量化を実現。昨年8月から組み立て、すばる望遠鏡にこのほど搭載して作動確認を行った。総レンズ枚数は従来のままだが、視野角を約3倍に拡大。これを駆使することで、従来、観測に16年かかる範囲を、約2年で観測することができるようになるという。
国立天文台などは、試験観測を続けた後、来年8月から本格観測。約5年かけて数億個にわたる銀河のデータを集める。本格観測では、主に重力によって銀河や星などが誕生する骨格のような役割を果たしたと言われる謎の暗黒物質を観測。目には見えないが、暗黒物質の持つ重力が光を曲げるため、銀河の光のわずかな曲がり具合を発見し、暗黒物質の詳細な分布図を完成させる計画。宇宙を膨張させる謎の暗黒エネルギーについても調べる予定だ。