ハワイ往復4万円!? 夏の需要に大打撃
ハワイなど海外旅行の大きな阻害要因の一つとなっている「燃油サーチャージ」が7月1日以降、また引き上げられる可能性が高まってきました。燃油サーチャージとは燃油価格の上昇に伴い、航空運賃だけでは賄えない燃油コストの一部を乗客が負担する費用。米国エネルギー省が8日公表した4月末までの原油市況価格が、直近3カ月平均で1バレル当たり126ドルに上昇。これは日系航空会社が定める現行の基準値を2段階上回るため、このままではハワイ便の場合は一人当たり往復4万円(現行2万8000円)に跳ね上がり、夏場の旅行需要への打撃は必至となりそう。観光業で成り立っているハワイの関連業者の悲鳴が早くも聞かれます。
日本航空と全日空は、今月20日頃までに国土交通省へ正式に認可申請を行う予定。日本の旅行各社は、稼ぎ時のゴールデンウイークは日並びの悪さから今年は苦戦したことから、家族旅行の需要が高まる夏場での巻き返しを図ろうと、様々な商品を早期投入するなどの施策を打ち出しています。が、家族4人でハワイ旅行となるとサーチャージ額が計16万円、現行と比べても計4万8000円の負担増となれば、折角の繁忙期に水を差すのは避けられない見通しとなりそうです。
航空各社の最終判断はこれからですが、サーチャージが過去最高水準に達し、割安なペックス運賃(航空会社が設定した正規の割引運賃)額を上回るという逆転現象まで起きているので、利用者への影響をどう見るかで、今後の判断が変わる可能性も否定できません。また、航空運賃と別建てとなっていることで、利用者からの苦情も多い中、この分かりにくさについて一定の認識を示している行政サイドが、今後どう判断するのか、注目せざるを得ません。
7月以降の燃油サーチャージ改定について、2008年3月期連結決算で本業の儲けを示す営業利益が前期の約4倍となる900億1300万円の大幅増となった日本航空ですが、「値上げなしでは難しい」(関係者)との認識を示しています。サーチャージ高騰による需要冷え込みの懸念についても、「需要への影響など、あらゆる角度を勘案しながら検討中。必ず値上げすると決めたわけではない」としながらも、原油価格が過去最高値を更新し続けている状況下で、「全く値上げなしではやっていけない」とコメント。一方、全日空も現時点では、すでに打ち出している改定条件を否定していません。
こういう逆風の中で、日本旅行業協会(JATA)は、航空各社に燃油サーチャージ問題解決に向けた要望書を提出。内容は、旅行商品の原価となるIT運賃に燃油サーチャージを内包した新しいIT運賃の設定を求め、(1)普通運賃の燃油サーチャージに対する手数料、(2)大人と同額となっている幼児の燃油サーチャージ廃止、(3)旅行代金の総額表示化に合わせた航空会社の運賃表示の総額表示化など。今回の要望書提出は、旅行業界の総意として総額表示導入に向けた取り組みを航空会社に伝えるものとなっています。
燃油価格の上昇は、米国のドル安やサブプライム問題で冷えてきた不動産市場を見限った機関投資家などによるものと見られていますが、いつになったら「期間限定」とされる燃油サーチャージの負担はなくなるのでしょうか?