メサ航空には8000万ドルの賠償命令
ハワイの海と空を舞台に繰り広げられていた2つの訴訟問題で28日(水)までに、鳴り物入りで8月26日(日)に初出航しながら、環境問題に基づく運航差し止めを求める訴えのため、わずか2日で運休状態に陥っていた大型定期フェリー「ハワイ・スーパーフェリー」は12月6日(木)からオアフ島ホノルル-マウイ島カフルイ間に限って再就航することになりました。カウアイ便の就航は未定。また、ハワイアン航空がメサ航空グループ傘下の「ゴー!航空」を相手取って機密情報を不正に使用したなどと訴えていた裁判で、ゴー航空は8000万ドル(約87億円)の損害賠償を支払うことを命じられました。果たしてこの海と空のバトル、今後の動向が気になるところですが、最終決着までもう少し時間がかかりそうです。
■カウアイ便の再就航は未定
地元では長年の夢だったハワイ・スーパーフェリー「アラカイ」の就航でしたが、マウイ、カウアイ両島の反対派住民を中心とする地元環境保護団体が、「フェリーで持ち込まれる可能性のある外来植物や近海を周遊するザトウクジラなどへの懸念」を表明して訴えを提起。マウイ巡回裁判所は空路と並ぶ輸送手段の公益性を認める一方で、環境調査が終了前の運航で修復不可能な損失を与える恐れがあると指摘。運航差し止めがもたらす経済的損失を十分に認識しながらも、州環境保護法の趣旨は環境と経済という相反する利害が衝突した場合、環境が経済に優先することを保障している、と環境調査が終了するまで運航再開を差し止める裁定が下されていました。
運航休止中も、ハワイ・スーパーフェリーは総額200万ドル(約2億2000万円)の利子を債権者に支払う義務があるなど、一時は撤退かと騒がれました。関係港湾施設を整備するなど、スーパーフェリー推進派で、事態を重視したリンダ・リングル州知事が手を差し伸べ、臨時州議会を召集。事前の環境調査中でも運航できるという、州環境保護法の修正案が通ったことで、12月6日から再就航される見込みになりました。
ハワイ・スーパーフェリー社では、当初発表した12月1日再就航により、すでに予約された1日から5日までの乗船客らの変更作業を行っています。今回の再就航で、オアフ島ホノルル港-マウイ島カフルイ港間を毎日運航。なお、再就航を祝う特別料金は12月20日(木)まで片道29ドルとなるほか、同21日から2008年3月12日までは片道39ドル。また、一般車両は片道55ドルとなり、すでに正規料金で購入した乗船客には差額が払い戻されます。
■ハワイアン航空 VS ゴー!航空はハワイアン側に軍配
空の争いは、連邦破産裁判所がメサ航空グループに対し、原告のハワイアン航空へ8000万ドルの損害賠償を支払う裁定を下しました。判決によれば、ゴー!航空の親会社であるメサ航空グループに、「ハワイアン航空の機密情報を不正に使用して利益を上げた」ことを理由に、ハワイアン側に軍配を上げました。判決ではまた、メサ航空グループ副社長が機密書類の提出を故意に避けようと、コンピューター内にあった情報を抹消したと認定。ハワイアン航空が訴えていた、同社の極秘内部資料を入手し、ゴー!航空をハワイの島間運航便に参入させるために用いたことも認めました。
事件の発端は2003年3月から2005年6月にかけて、ハワイアン航空が連邦破産法(日本の会社更生法に該当)申請中に起きました。ハワイアン航空は、メサ航空グループが意図的にライバル社を経営破たんに追い込もうとしたとして、1億7300万ドルの損害賠償請求と島間航空券の販売差し止めを求めていました。格安航空券の販売差し止めまでは、認められませんでした。
航空業界では、損害賠償額の8000万ドルはメサ航空グループが昨年度に計上した3400万ドルの2倍以上ということで、ゴー!航空は敗訴でハワイから撤退するのでは? という見方も出ています。が、メサ航空側では上訴して争う方針。なお、メサ航空グループに対しては、アロハ航空も現在、独占禁止法よる訴訟を起こしています。