脅威なのか、脅威ではないのか
日本時間5日朝、北朝鮮が発射した長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の照準は、ハワイ周辺海域に合わせられていたことが日本のメディアで話題になっています。報道によると、複数の日米政府筋が明らかにしたそうです。
テポドン2号は5日午前5時前、北朝鮮北東部にあるムスダンリから発射され、約40秒後に失速、数百km先の日本海に着弾。複数の日米政府筋が明らかにした情報を総合すると、米軍と防衛庁がイージス艦や弾道ミサイル追跡用電子偵察機などで収集したデータから弾道を分析した結果、発射直後の弾頭の角度や高度などから、照準はハワイ沖に合わせられていたということです。
理由については明らかでありませんが、北朝鮮の狙いが米国による金融制裁解除にあるとされています。つまり日米の政府筋によると、米国が射程圏内であることを誇示し、ハワイには米海軍の太平洋艦隊司令部があり、命中精度が低いためアラスカ方面へ発射すれば誤って陸地に着弾する可能性があることなどから、ハワイ沖に照準を合わせていたようです。
このニュースは日本のメディアやロイター通信などを通じて、ハワイを含む米国のメディアにも配信されましたが、意外に地元ハワイでは、ほとんど話題にもなっていません。考えられるのが、そもそも脅威とは思われていない、あるいは脅威だからこそ観光産業や市民生活などへの影響を懸念して情報を抑制して混乱を避けた、のどちらに近いのかという疑問が頭をもたげました。
そこで思い出したのが、2003年3月に米英軍のイラク攻撃が始まった直後に、当時ベン・カエタノ州知事の側近だった州政府高官に単独インタビューした時の内容です。高官は「ハワイは米国にとって地理的にも軍事的にも重要な拠点で、セキュリティーレベルは国内でもトップクラス。ハワイの基地は本土と比べても最先端のハイテクを備え、軍備レベルは国内トップクラスだと聞いています」と語っていたことです。実際、ハワイを支えている産業の構造は、観光業と軍事基地が2大柱になっています。
もちろん、軍事情報は最高機密なので詳細は窺い知れませんが、少なくとも当時の高官の話を思い出しながら、断定はできませんが、今回はまだ大した脅威ではなかったのではないか、と考えられます。北朝鮮がミサイル発射準備をしていたことは偵察衛星ですべて把握し、本当に脅威だったら事前に何らかの情報がもたらされたのではないかと推測できます。また、ハワイ駐留の米海軍太平洋艦隊に迎撃用ミサイルくらいあると考えるのが常道で、周辺海域には原子力潜水艦の姿も見受けられます。
その後、日本の防衛庁長官が「北朝鮮が発射した弾道ミサイル7発中の1発が短距離のスカッドCの飛距離を伸ばした改良型の実験だった可能性がある」ことを指摘し、「ノドンなどは一定の海域に集中して着弾しており、(テポドン2号より)直接的な脅威として重大に受け止める必要がある」と、テポドンよりノドン・改良型スカッドミサイル脅威論を明らかにしたことも、ある程度、今回の照準については脅威ではないと判断できるように思います。
そんな騒ぎとは別に、ワイキキに象徴されるハワイは今日も常夏らしい快晴が続いています。